美術解剖学を必要とする方のために

はじめに

「美術解剖学が必要」なのはなぜでしょうか?

 私の答えは以下の3つです。 

1.美術解剖学を学ぶ事で、自分が納得のいく人物画になり、表現の幅が広がります。

2.人体の形を表すシルエットや輪郭線の意味を理解できるようになります。

3.体には数多くの凹凸があり、それらには全て意味があることがわかるようになります。

 

美術解剖学を学ぶ事で、今まで見えていなかった骨の陰影や筋肉の形が浮かび上がって見えてくるようになります。また、極端に膝下が長くなったり、関節が曲がらない方向に曲がったりとバランスを崩すことなく表現できるようになると思います。

解剖学は知識量が豊富な学問です。たくさん知っていれば、それだけ有効に使える知識だと思います。私は、解剖学的な用語をたくさん覚えるのではなくて、図として骨の形や筋肉のふくらみ具合などを記憶した方が作品製作の手助けになると考えています。

解剖図も絵を観るという作業ですから楽しいはずです。

 

美術解剖学を学ぶとなぜ、自分が描く人物画に納得いくようになり、
表現の幅が広がるようになるのか?

 描く対象(人物)を観た時に、知識があるとより細かく見えるように目が養われます。知らない事や意識していないことは、目の前に対象があったとしても、見ているようで見ていない事が多くあります。そのために、美術解剖学の知識を得て注意深く人物をじっくり観察する訓練が必要になります。

例えば、人の歩行を観察した時には、腕の振り方が性別により違いがあります。なぜなら、女性では、胸郭が小さく骨盤が広いために腕が外側に曲がって振られています。男性では、胸郭が広く、骨盤が狭いために直線的な腕の振り方をしています。

観察して得られる視覚的な情報量が多ければ多いほど、絵の中に表現できるようになります。知らない部分や理解していない部分はあやふやにして描いてしまう事もあります。その時には、知識を確認して、人物をじっくり観察してみてください。ゆっくり注意深く見れば理解できるはずです。

絵を描くということに正解はありません。
解釈の違いからくる表現の違いだと考えています。

しかし、得られる視覚的な情報は多い方がより表現の幅が増えます。
そのために、誰にでももっと広く美術解剖学を学ぶことが出来る場所が必要なのだと感じました。

 

人体の形を表すシルエットや線の意味を知る必要があるのでしょうか?


人体が作る自然な曲線を描くためには、筋肉の形を覚えると理解しやすくなります。

人体は体表から深部に向かって、皮膚、皮下組織、筋、骨という順番になっています。輪郭線の多くは、皮膚の下にある筋肉の層の盛りあがりによって作られています。

皮膚の下の構造を知る事で、輪郭線がより人物の形を表現した線になりやすくなります。

 

人体の凹凸にどんな意味があるのか。

 人体の凹凸には、骨の構造や筋肉の形を読み解くための指標になります。体の表面から見えている一部分から体全体へのつながりを想像するための手がかりになるからです。

 例えば、人物を正面から見た時に、腕をどこから描けばいいのかと迷う事があるかと思います。腕を描く場合は、体の表面から見える鎖骨を外側の端まで追って見ていきます。肩甲骨と鎖骨が合わさって関節(肩鎖関節)になっている部分があります。その下の辺りに上腕骨があります。凹凸を理解する事で、腕はどこから描けば自然なのかという指標になるということがわかります。

 

従来の解剖図


多くの解剖図では、直立した状態で手の平を前に向けて指を伸ばした状態が基本となって描かれています。この図は、不自然な姿勢で人が表現されています。解剖図に皮膚を付けて描いて見るとより硬さが強調されます。

多くの絵やイラストでは、自然な姿勢で表現され描かれているのに、従来の解剖図ではそれが表現されていません。新しく自然な状態に見えて、機能的であり、美術家さんが使いやすいと思える解剖図が必要だと考えています。

なぜなら、従来の姿勢の解剖図を理解したとしても、極端に手の平を正面に向けた絵の構造を理解する事になります。

 方法として、従来の解剖図の状態から、より自然な姿勢になるように変化させて描いていきます。更新は不定期になりますが、Web上に美術家さんのための解剖図の製作の様子をアップしていこうと思います。

おわりに

私は、学生時代にきれいな解剖図を見るのが楽しくてずっと眺めていました。

現在は、医療的な解剖書から美術解剖学の本を読み、骨格模型で関節の動きの確認をして3次元的に解剖図をイメージできるように訓練しています。

絵を描く事で、人体の構造の理解のあいまいな部分に光が当たるようにわかります。そして、もう一度調べ直して、確認して、模索して、考えて、試しに描いての繰り返しの作業をしています。

 

解剖図を製作していて感じるのは、「理解できない物は描けない」ということです。

 

絵を描くことで対象物に意識を傾ける時間が多くなります。描きながら考えるし、対象物から多くの気づきが得られます。これは、絵を描いた人のみが得られる経験です。

絵を描く面白さと、構造を理解する楽しさも多くの人と共有できたらと思っています。
私は、絵描きや美術家さの作品を観るのも、話をするのも好きです。今後、製作する解剖図が多くの美術家さんに役立ち楽しんでもらえたらうれしいです。

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